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Saturday, 13 November 2004

レヴァインについて思うこと

 彼地でジェームス・レヴァイン指揮ボストン交響楽団演奏会に行かれた留学生の方の記事を見付けた。学生向けの切符が8ドルで手に入るそうで、日本円だと1000円前後、確かに魅力的だ。
 この方は開演後最後列から席を移ったらしいが、ボストンのシンフォニー・ホールの最後列なら小沢征爾の「指定席」がある筈だ。音楽監督の頃、他の指揮者と自分のオーケストラとの演奏会を聴く時に必ず小沢征爾が座ったところだ。記憶によれば座席の背中の所にプレートが貼ってあるのではなかったか。次回は小沢征爾がいつも聴いた音を聴くのも一興かもしれない。

 メトロポリタン歌劇場=メトの親分として永くオペラを振って、アメリカのクラシック楽壇では重鎮の地位を占めたレヴァインが、とうとうメトを離れて本場ミュンヘンのオーケストラの面倒を看ることになってから既に数ヵ年、結局ミュンヘンは諦めてボストンに腰を据えたのか。

 レヴァインはこと日本の音楽ファンには今一つ人気という点で履歴に見合うとは言い切れないきらいがあったと思う。僕もテレビの実況録画等を通した限り余り興味を持つ方ではなかった。それに僕はオペラは余り聴かないから、オペラ畑のレヴァインとは元々縁が薄かったかもしれない。

 日本のファンは稀に見る潔癖症だというのが僕の推測である。クラシックならドイツとオーストリアが本場であって一番で、従ってアメリカ人のレヴァインは世界最高のオペラハウスで仕事をしているのに、傍流としか見られなくて損をしてきたのではないか。ミュンヘンでの評判が良ければ風向きは変わったかもしれないが、結果からするとレヴァインは、ヨーロッパは棄ててアメリカを選んだ様に見えてしまう。
 最近はミュンヘンでの演奏が幾つかCDとして発表されてきたが、それまでレコードでは全くレヴァインは過去の人だった。僕は個人的に、90年代に出されたウィーン・フィルとのブラームスのCDが、レヴァインを決定的に日本から遠ざけレコーディングからも遠ざけたのではないかと思う。
 聴いていないから本当はこんな事書いてはまずいが、しかし評判は頗る悪い。普通ウィーン・フィルのレコードは、せいぜいオーケストラの音の美しさという事位は褒められるものなのだが、このブラームスは本当に悲惨なくらい褒められなかった。余程評判が悪いのか、まだ新しい録音なのに廃盤らしくHMVのネット商店で検索を掛けても出てこない。スタンダードな作品でウィーン・フィルを擁してコケたとすれば、それは相当なダメージになり得る。

 そういうことがレヴァインを老け込ませてしまって、評価の固まったアメリカに引っ込んでしまったのだろうか。上述の記事では、レヴァインは椅子に座って指揮していたそうだ。10歳近く年上の小沢征爾があんなに元気でいるのに。体調不良なのかもしれないが、幾ら何でも淋しい事だ。
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 クラシック音楽ファンの方のサイト「An die Musik」に「アメリカ東海岸音楽便り」という特集があって、そこにレヴァインとボストン交響楽団に関する記事もあった。今年の1月の演奏会である。
 それによると、矢張り椅子に座って指揮していた様だ。記事中でも体調は万全ではなかったかもしれない、という様にあり、時期的に感冒かもしれなかったが、椅子が必要という点では10ヵ月後も変わらなかった訳だ。レヴァインは結構大柄な人なので、或は膝でも痛めたのかもしれない。

 因みに最初の留学生の方が聴かれたプログラムは、予定ではシューベルトの「グレイと交響曲」がメインで、リヒァルト・シュトラウスが前半にあった様だ。

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